関東地方のお母様より、名古屋市内で勤務している20代のご子息についてご相談をお受けしました。
お話を伺いますと「息子は勤務先に全財産を没収され、仕事もプライベートも監視されているような状態です。給料は25万円ですが、社長の息子に家賃などを取られ、手元には2万円しか残りません。20歳になった途端、生命保険にも加入させられ、借金漬けにされているようです。一時は死にたいとも言っていましたが、この生活を続けるしかないと洗脳されています。勤務先の名前や住んでいる名古屋市内のマンションは分かります。マンションには息子の他、社長の息子、その彼女、他の社員の4名で住んでいるようです」ということです。
ご両親としましては、現在の勤務先から息子さんを一刻も早く脱出させたいと願っていらっしゃいます。
ご相談をお受けし、まずはお母様からお伺いした息子さんが住んでいるというマンション前で探偵が張り込んだところ、出入りしている様子がありません。
おかしいということで勤務先を調査してみますと、勤務先の屋号は存在しましたが、住所が存在しません。
私共で正確な勤務先住所を割り出し、探偵2名が現地の下見も兼ねて息子さんの素行調査を開始したところ、愛知県内の町工場のような作業所から20代と思われる同僚社員が出てきますと、一緒に出てきた息子さんに何かを投げつけ、腕を掴み、背中に何か入れる仕草をしました。
続いて高齢男性2名が出てきて4名でトラックに乗り、1名の高齢男性を駐車場で降ろした後、同僚男性と息子さんの二人が一軒家の前で降ろされ、敷地内に入ったことを確認しました。
この一軒家の表札が勤務先の屋号の一部と一致したことから、社長の自宅で、同僚男性と共に共同生活を送っているものと思われました。
自分の母親に勤務先の場所や住んでいる住所まで嘘をつかなければならなかったのは、こちらの社長もしくは息子に口止めされていたからでしょう。
同僚男性の態度や工場の雰囲気からして劣悪で、勤務先と居住先の往復のみの一切の自由がない生活は、人間としての尊厳が失われているとしか言いようがありませんでした。
息子さんを奪還するにあたり私共で綿密な計画を立て、探偵が現場でトラブルが起きた際の監視撮影と運転手を兼ねて現場で見守り、立会人として弁護士の先生をご紹介して、ご両親と共に同行していただきました。
息子さんは抵抗することが予想された為、連れ出す際には一軒家に入るタイミングでご両親から「ちょっと話がある」と言ってそのまま車に乗せ、直接事務所まで連れて来ていただきました。
私共の事務所に到着した息子さんは事態が呑み込めずパニックになりましたが、ご両親がゆっくりと話し掛け、代表がご両親の気持ちを代弁しますと、涙を流しながらポツポツと今までの地獄のような生活状況を話してくれました。
本人が恐怖に思っていることや不安に思っている事に対して、同席した弁護士から問題ない、すべて解決できるということ、今後も弁護士と前田代表でパックアップしていくので大丈夫という事を息子さんと約束しました。
そして、落ち着いたところでご両親と共に、関東にあるご実家まで帰宅の途に着かれました。
後日、ご両親から連絡を頂きましたが、午前3時に無事帰宅できたこと、「私たち夫婦だけでは何も出来なかった、本当に本当に感謝している」ということ、洗脳状態にあった息子さんは暫くカウンセリングに通う予定であること、お風呂にも入ることが許されず、自由の身になれた事がとても嬉しそうな様子であることなどが感謝の言葉と共に綴られていました。
「息子を何としてでも助けたい」というご両親の強い願いにより、息子さんが無事救出されましたこと、私共としましても大変嬉しく思っております。
このように数人をタコ部屋に押し込み、労働力を詐取する手口は外国人労働者や外国人技能実習生に対するものと思っていましたが、日本人に対しても劣悪な環境に囲い込み、マインドコントロールにより奴隷のような生活を強いている劣悪な作業所が愛知県内にも存在するという現実に、何か薄ら寒いものを感じました。
息子さんのように対象者が成人である場合、警察に相談しても動いてはもらえません。
洗脳されたり、あらゆる形で恐怖心を植え付けられたりしているお子様は、自分では助けを求めることも、脱出することも出来ません。
家出をして宗教団体、引きこもり矯正施設、今回のケースのように劣悪な作業所などから子供を助けたいと願うご両親がいらっしゃいましたら、全てをお受け出来るかは分かりませんが、一度お悩みをご相談ください。